Branding
ブランディングの領域は、
シンプルな座標軸で表現することができます。
ブランドは、人と人の心の中に存在する「共通の価値」です。価値の種類にはいろいろな区分方法があるでしょうが、worxでは「損・得」という費用対効果による数値化も不可能ではない定量的な軸と、「好き・嫌い」という数値では測りにくい定性的な軸とでブランドの力を整理しています。
「損・得」を「関心の高さ ≒課 題の重要度」、「好き・嫌い」を「関係性の強さ ≒ 心理的な距離」として整理したマトリクスを見てみると、ブランドが成立しやすいのは右上の「共感」のゾーンであることが分かります。
関心が高い(≒ 課題の重要度が高い)のに、解決策となる商品やサービスとの関係性を見出せない場合は、解決策に「遭遇」するための施策が必要ですし、逆に関心が低い(≒ 課題を認識していない)場合には、それを発見させるための「誘導」が必要になります。関心が低く、関係性も低い領域で、ブランドがいきなり成立することはありません。
ブランディングの成功のためには、組織横断型の
小さなプロジェクトチームから始めることが理想です。
ブランドは「共通の価値」であり、「ブランディングは「価値を共有するプロセス」です。言葉遊びのようですが、この違いは認識しておく必要があります。
強いブランドを築くために、関係者の心理や行動のベクトルが揃っていることが当然だと分かっていても、それぞれの置かれている立場や取り囲まれる環境の変化によって、同じ方向に向かっていたはずなのに、気が付くとばらばらになっているというケースは珍しくありません。
そうした不作為の過ちを防ぐためにも、ブランディングは、「小さく濃い」組織(プロジェクト・チーム)を立ち上げ、定義したビジョンを言葉ではなく、まさにコンセプト(概念)として理解することが重要です。さらに、プロジェクトを通じて様々な戦略の立案作業を行うと同時に、生成・濃縮されたコンセプトが希釈され、「飲み頃」になった状態で組織内に浸透していくような工夫をプロジェクトの進捗に合わせて施すことも、コンセプト・ワークと同等以上に、ブランディングを成功に導くカギになります。
ブランディングのプロセスは、
顧客課題と提供価値を定義することから始めます。
全てのデザインは、何らかの課題を解決するためのものですが、ブランディングは、経営の課題を解決するためのデザインとして位置付けることができます。
個々の業務や単位となるプロジェクト等が、常に
「誰の・何を・何で・どうやって・なぜ」を明確にし、ブランドとしてのベクトルを揃えることで、経営の課題を解決するブランディングの実現に近づくことができるのです。
特に「何を=顧客課題」と「何で=提供価値」は、課題と価値の交換のベースとなり、LTV(顧客生涯価値)にも直結するものすから、その背景となる顧客行動と業務行動は、つねに「解決接点」と照合し、どのようなアクションによってどのような成果が得られたのか、共通の評価指標による検証を繰り返す必要があります。
検証のプロセスには、良く知られているPDCAやデザイン思考も有効です。
従業員もブランドの一部であるためには、
デュアル・ジャーニーという考え方も必要です。
より深く顧客心理にアプローチするために、カスタマー・ジャーニー・マップを作る企業も多いようですが、顧客も含めてあらゆるものがメディア化している今日の社会では、スタッフもまたメディアであり商品であるという位置づけが強くなってきています。
こうした変化に対応するために、もう一つのジャーニー・マップである従業員ジャーニー・マップを開発し、カスタマー・ジャーニー・マップとリンクさせるような工夫も必要になってきます。
これは、CS(顧客満足)とES(従業員満足)の
関係が不可分であるのと同様の考え方です。
労働力の流動化やリモートワークの増加等の社会背景の変化については割愛しますが、自分自身もメディアの一部であり商品であるという認識は、スタッフの働き方そのものを変えるはずですし、企業のブランディングを進める大きな力になることは間違いありません。
バリューチェーンやカスタマ―・ジャーニー等も有効ですが
この「サイコロジック」もなかなか使える立方体です。
「Psychologic / サイコロジック」。
3C、4M、4P、PEST、SWOT・・・。
マーケティング理論で登場する主なフレームワークを「多面的」に使って、顧客課題と提供価値や顧客とクライアントの心理を整理し、誰でもがコンセプトワークの核心に近づく思考方法を持つことができるように工夫した「サイコロ軸」です。
組み立てると、コンセプトを底にして天井の位置に顧客が来るように作られており、その四方を商品、自社、競合、コミュニケーション戦略が囲む形になります。マーケティングの基本と言われる4MやSWOTは、それぞれの箇所からタグがはみ出るイメージです。
Psychololgicと、ネーミングは遊んでいますが、コミュニケーション戦略やブランディング戦略を検討する際のワークショップ等の小道具として自作してみると、無理なくマーケティングの基礎を理解することができ、その有効性を実感して頂けるはずです。
色にも、音にも、文字にも個性があります。
それらを制御できれば、ブランドはより強くなるはずです。
白が清潔さを表したり、黒が強さを表したり、あるいはそれを対比させることで善悪を表現したり、色は、まさにいろいろな意味を持って使われます。また、優しいものには柔らかい音や軽い音が使われ、強いものには濁った音が使われます。
こうした傾向は、ほぼ全世界共通のものです。
日本の場合には、さらに漢字という表意文字もありますから、こうした表現メディアには、何かモノやコトの性質を伝えるための、独特の共通機能があるのではないか、と考え続けているのが、この「イメージルーラー」です。
何らかの検証を得たものでもありませんし、数値化して測定することもできませんが、テキストマイニング等のさまざまな分析機能が発達することで、いずれこのような表現メディアのロジカルな管理も可能になってくると考えています。
もちろん、表現のディテールの背景に、しっかりしたコンセプトが無ければならないことは言うまでもありません。